ドラゴンを探し求めて

「憧れの人には会うべきではない」という言い習わしがあります。私はこれまでに、多くの憧れの人に会うことができており、そのいくつかはあまり良い体験ではありませんでしたが、後悔したことは一度もありません。幸運だったと思います。出会えた憧れの人の何人かは、マジック:ザ・ギャザリングのアーティストでした。彼らのアートは私にとって幼少期から大きな存在で、ファンタジーアートへの興味が深まり、美術学校に進むきっかけとなりました。そのうちの一人は、昨年の今頃亡くなったWilliam "Bill" O'Connorです。彼は優れたファンタジーアーティストで、ダンジョン&ドラゴンズやマジック:ザ・ギャザリングなどのゲームにも携わりました。しかし私にとって一番重要だったのは、彼が素晴らしい人物だったということです。

William O'Connorの写真

2006年のGenconで、私はBillと会いました。そのとき私は芸術の学位の取得を目指す2年目で、私のために時間を取ってくれる全てのアーティストに話しかけていました。彼らはどのように絵を描くのか、なぜデジタルまたは伝統的手法で描くのか、どのようにスケッチするのか、どのブラシを使っているのか、このような頭に浮かんだ質問をしたかったのです。Billはこれら全てを質問することを許してくれ、そして全てに答えてくれたのです。その当時の私にとって、それがどれだけ意味のあることだったか、そして今日の私にとっても意味があることかは言い表せません。私が経験したように、皆さんがBillと会って話す機会があったならと思うばかりです。

ゲームに携わるほかに、Billはドラゴンを描くことで知られていました。彼はDracopedia という素晴らしいシリーズ本の著者であり、イラストレーターでした。Billに敬意を表して、マジック:ザ・ギャザリングのドラゴンについても、私は同じことをしたいと思ったのです。Billだったら、ドラゴンをまるで本当に生きているかのように具体化し、ドラゴンとの出会いと、その研究について数ページにわたって書くでしょう。そして、どのように、どんな手順でドラゴンを描くかに集中し始めるでしょう。今回の記事では、出会いと研究の部分についてだけ書こうと思います。

以前の記事で書いたように、私のお気に入りのアートのいくつかはコンセプト段階のものなので、私はマジックアートでドラゴンのコンセプト作品を探しました。そしてSteve Prescott氏による美しい作品、イニストラードセットのコンセプトプッシュ を見つけました。これを見ると、1つのコンセプト作品が複数のアーティストによってどのように解釈されるか、ということが分かるかと思います。今から始まるジャーナルで、クレジット表記がない絵は私が描いたもので、全ての詳細はカードや本の記事から情報を寄せ集めたものであり、公式な作品ではありません。それでは始めましょう。

イニストラードのドラゴンフィールドジャーナル

記録1

これは私の初めてのイニストラードへの冒険だが、この次元は私の好みに合わないと言わざるを得ない。この次元では、何者かに見られているという感覚が、どこに行ってもついて回るのだ。技としての黒魔術に対して私は是も非もなく、時折そのようなクリーチャーの研究をしてきたが、イニストラードでのアンデッドの流行は研究の対象というよりは、むしろ邪魔者である。吸血鬼やデーモン、最近問題になっているエルドラージや狂った天使などは言うまでもない。しかしながら、もしもエルドラージの存在によって起こっている突然変異が、この次元の全てのクリーチャー、そして私がここにいる理由に影響を及ぼしているとしたら、それを観察するのが面白いだろうと思ったのだ。


イニストラードのドラゴンのスケッチ (Steve Prescott)

私は、イニストラードにひっそりと暮らすドラゴンを探しに来ている。ドラゴンを目撃することは極まれで、それは潜在的に危険なことである。なぜなら、ここのドラゴンは縄張りに入った人間や野獣など、どんな生き物でも捕らえて殺してしまうことで知られているからだ。ある種のドラゴンは、人間を食料としてあまり捕らえないという証拠もいくらかある。これらは幸運のしるしとしてみなされ、月の帳のドラゴンとして知られている。

「その心臓は打ち、その肺は呼吸し、その身は真なる姿です。生ける者の仲間としてよいでしょう。」

― 聖戦騎士サリア

月の帳のドラゴン (Todd Lockwood)

記録2

イニストラードの山 (James Paick)

ここに来るのは今回が初めてでこの地域をよく知らないので、Macというガイドを雇うことにした。ガイアー岬の山々は、吸血鬼が支配するステンシアの中にあり、ドラゴンの棲み処となっている。私が行かねばならない場所は、その地区で一番遠いところに位置している。我々をその場所に連れていくことを、ガイドのMacはよく引き受けたな、と私は驚嘆している。しかし、私には多くの選択肢がない。なぜなら、彼がこの仕事を引き受けた唯一の人物だったからだ。

ツアーガイドMacのスケッチ (Steve Prescott)

記録3

ステンシアを旅する途中、地元の者にドラゴンの生息数について聞くチャンスはほとんどなかった。ステンシアの人々はあまり社交的ではないのだ。彼らは口数が少なく素っ気なさすぎたが、父親が描いたというドラゴンのステンドグラスの絵を持つ人物に出会った。それを再現しようと最善を尽くしたが、そのスケッチは奇妙だと感じた。なぜなら、ガイアー岬では常に雲が空を覆ていて滅多に月を見ることはないからだ。その絵はガイアー岬のものではない、というのが私の推測だ。彼の父親はすでに亡くなっているので、それ以外の詳細は分からなかった。その他、唯一私が地元の民から得たドラゴンについてのアドバイスは、次の通りだった。

「お前の方向に向かってきたなら、勇敢に死ぬかあっという間に死ぬか――望む死を選ぶといい。」

ステンドグラスの再現

記録4

彼らのアドバイスは正しかったようだ。我々はドラゴンの手がかりを探すのに何日も費やした。ツアーガイドの、友人がエルドラージに殺されたという同じ話が14日間も続き、そろそろ耐えられなくなってきた。15日目に、我々はドラゴンを偶然目にした。次に起こったことは私の過失だったと認める。ガイドの警告にもかかわらず、私はスケッチをしながらより良く見るためにドラゴンに近づいて行ったのだ。それはとても壮大な生き物だったが、残念ながら月の帳の種類ではなかった。後で知ったが、地元の民はそれを「災火のドラゴン」と呼ぶという。

大翼のドラゴン (Daarken)

災火のドラゴンは私たちの存在が気に食わず、襲い掛かってきた。「私はドラゴンより速い必要はない。あなたより速いだけでいいのだ」という言葉にあるように、私とMacはドラゴンから逃げようとした。そして私の方がMacより速かった。彼の専門知識と犠牲のおかげで、私は研究のための情報を集めることができた。できる限り詳しくドラゴンを見た後で、私は自分も食べられてしまう前にこの次元を去った。

生態

私が目撃したドラゴンが、イニストラードのドラゴンでよく見かけるものか、そうでないかは分からない。それは体長約30m、翼長約28mだった。彼らは、イニストラード次元のステンシアにあるガイアー岬の山々の外れに住んでいる。情報によると、山々では彼らが頂点捕食者だという。飛行能力やサイズ、獰猛性においても、このイニストラードのドラゴンに勝てるクリーチャーはほとんどいない。

イニストラードのドラゴンを上から見た図

ドラゴンを目にすることは、皆無と言っていいほど珍しいので、彼らの交尾の習性や、一度に産む卵の数などについてはほとんど情報がないのだ。ドラゴンの産卵数は少ないに違いない。捕食関係や環境が原因で少なくなっているのかもしれない。

横顔スケッチ

イニストラードのドラゴンの興味深い特徴の1つは、その翼だ。大体のドラゴンが皮膚でできた翼や飛膜をもっているのに対して、イニストラードのドラゴンの飛膜は胴体とくっついていない。代わりに、中手骨と指骨の間に飛膜が張っているのだ。羽の支持構造が、ステンドグラスに似た模様を創り出しており、昆虫の羽を連想させる。

翼の比較

イニストラードのドラゴンのいくつかの特徴は、自然のカモフラージュとなっている。暗い体色はステンシアの山々に適し、模様は人工の建造物に溶け込むようにできている。大聖堂の尖塔に止まっていても、獲物に襲い掛かるまでは気づかれないであろう。

災火のドラゴン (Eric Deschamps)

― 記録終了 ―

私のドラゴンの絵が、彼の元々のドラゴンのイメージに近いか確認し、そしてMacReadyのスケッチを使わせてくれたSteve Prescottに感謝しています。これがMacReadyのスケッチ全体像です ― 安らかに眠ってください。

MacReadyのスケッチ (Steve Prescott)

もしまだ見たことがないのであれば、William O’Connor’s booksの本を見てみることを強くお勧めします。素晴らしい読み物で、ドラゴンの描き方の良いヒントがもらえます。世界は少し寂しくなってしまいましたが、Billの思い出を輝かせ続けましょう。