キャラクターを作る

物事に重要性を持たせようとするのは人間の習性の一部であり、その最も簡単な方法は名前を与えることです。どんな名前でも良いわけではなく、適切な名前です。ディナーを運んできた「ウェイター」と「John Doe」では違いがあります。John Doeには生い立ちがあり、様々な出来事を経て、あなたに食事を運んできた人物にならしめたのです。

メリアム=ウェブスター辞典の「legend(伝説)」の定義を拡大解釈すれば、物語を動かす特定の人物、といことになるでしょう。マジック:ザ・ギャザリングでは、ゲームのストーリーのために作られる伝説カードは、特定の人物(クリーチャー)と場所(土地)から始まりました。その後、アーティファクトやエンチャントメント、プレインズウォーカーや一番新しいソーサリーのタイプまで広がりました。

私がライター仲間のDonny Caltrider氏とマジックアートについて話したとき、なぜある種の作品は私たちに訴えかけるものがあるのか、という終わりのない議論になりました。Donnyは強い物語性のある作品が好きで、何かが起こっているか、起こった直後を描いた作品に惹かれるといいます。個人的には、私は物語を暗示する何かがある作品が好きですが、それは人物や出来事についてです。私は「ゴルガリの女王、サヴラ」の最終スケッチを所有しています。もし作品そのものをただ眺めれば、黒と緑の女性エルフですが、それが伝説カードであるが故に、ラヴニカの次元における特別な黒緑の女性エルフとなるのです。

ゴルガリの女王、サヴラ(Scott M. Fischer)

たとえもしサヴラに関する物語がなかったとしても(実際にはあります)、名前がついているというだけで、彼女は固有の生い立ちを持ちます。先月の記事で、名前の重要性と、それがカードの見方にどう影響するかについて書きました。Scott Fischer氏は、美しい緑と黒のエルフシャーマンを描きました。もし仮に彼女が「ゴルガリシャーマン」と名付けられていたとしても、作品はそれでも機能したでしょうが、この作品が「ゴルガリの女王、サヴラ」と名付けられたことで、彼女は権力を持った女性で特別である、ということが見る人に分かるのです。

ゴルガリの女王、サヴラ(Scott M. Fischer)

カードのキャラクターに適切な名前を与えることで、それらのキャラクターに重要性を与えているのです。他の例としては、ニコル・ボーラスがあげられます。彼はマジック:ザ・ギャザリングの最も強大なキャラクターの一人で、最古のキャラクターの一人でもあります。ニコル・ボーラスは1994年のLegendsセットの中で、以下の絵でカードに印刷されました。


ニコル・ボーラス(Edward Beard Jr.)

ボーラスは、2008年にD. Alexander Gregoryによる新しい絵が出るまで、このイメージをキープしていました。若いころのニコル・ボーラスを描いた同じアーティストに、2009年のコンフラックスのセットでプレインズウォーカーになったニコル・ボーラスも描かせました。

ニコル・ボーラス (D. Alexander Gregory)

プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス(D. Alexander Gregory)

マジックの歴史の中では、何百ものドラゴンが印刷されていますが、ニコル・ボーラスは唯一無二であり、D, Alexander Gregory氏の描いたボーラスは今やキャラクターそのものと同義です。以下のニコル・ボーラスの作品で、あなたは何か共通要素を見つけられるでしょうか。

最古再誕(Jenn Ravenna)

王神、ニコル・ボーラス(Raymond Swanland)

Behold My Grandeur(Zack Stella)

覚醒の龍、ニコル・ボーラス(Svetlin Velinov)

破滅の刻のキーアート(Tyler Jacobson)


あなたはきっと、角の間にある宝珠に気が付いたことでしょう。それがニコル・ボーラスの象徴となっています。名前とイラストが連携して、ニコル・ボーラスを私たち皆が知るキャラクターにならしめているのです。これらの作品は、すべて異なるアーティストが描きましたが、私たちはそれを見て同じキャラクターと認識することができます。

ラヴニカへの回帰のコンセプトアート(Wayne Reynolds)

2017年のGPラスベガスで開催されたマジック・アートショーで、私たちは多くのマジックのコンセプトアートを展示しました。私は特に気に入ったものがあり、それはシミックのミュータントのカエルクリーチャーでした。シミックのミュータントクリーチャーというのは、ラヴニカの次元のギルドには必要不可欠なものです。なのに、なぜ私はそんなにも興味を持ったのでしょうか。この絵を描いたWayne Reynolds氏は、カエルに吹き出しのセリフをつけるまでに、いくらか時間がかかったそうです。セリフには「こんにちは。僕の名前はチェダー。あなたを家まで送り届けます。イエッサー!」とあります。突然、普通のシミッククリーチャーが「チェダー」になり、そして彼は人々を家まで送り届けることにとても熱心なのです。もしあなたが幸運にも25周年のマジック・アートショーに行っていたなら、シミックギルドの展示セクションでチェダーを見たかもしれません。それがチェダーだったと分からなかったかもしれませんが、今お分かりになったかと思います。このビデオでチェダーを見つけられるでしょうか。35秒あたりです。

あなたはどうかは分かりませんが、「チェダー」とうい名前がついているだけで、私は彼にとても親しみを感じました。適切な名前は、アート作品に大いなる意味を与えます。名前はイラストと連携して、キャラクターの裏にある歴史や物語を暗示しているのです。共通の要素は、複数の作品を瞬時に見覚えのあるキャラクターだと認識できるようにさせます。そして、もしあなたが私のような人だったら、「チェダー」のように、何かに名前を付けることで親しみを持ちやすくなることでしょう。