名前に何の意味があるのか

「私たちがバラと呼ぶものは、他のどんな名前で呼んでも、同じように甘く香るわ」 この言葉は、ウィリアム・シェイクスピアのロミオとジュリエットの劇中の有名なセリフです。正直に言って、私はあの劇のファンではありませんが、このセリフの大ファンです。このセリフは、私たちに考えさせます — もし名前を変えたとしても、ものは同じものであるのか。ゲーム業界において、もっとも象徴的な名前のいくつかがマジックに存在します。もし私が「ブラック」と「ロータス」という言葉を一緒に言えば、多くの人々の頭には、瞬時にマジックのカードが思い浮かぶでしょう。しかし、もしそれが別の名前だったらどうだったでしょうか。それはあなたがカードをどう見るかや、アートそのものに変化を与えるでしょうか。 私の前回の記事の中で、マジックアーティストが受け取る、アートディレクターが何を求めているかを説明したアート解説資料について言及しました。アート解説資料には、最終的な作品に入っているべき色や雰囲気、場面設定、そして主題などの詳細が書かれています。たいてい、アート解説資料には作品の名前がついています。アート解説資料に載っていた名前と、最終的にカードに載る名前が同じではない、という現象がしばしば起こるということは、多くの人が知りません。私ももちろん知りませんでした。私はカードの絵の原画を見るようになった時から、デザインやコンセプトの名前、仮称の存在を知るようになりました。そして、仮称と実際にカードに印刷された名前は一致しないということに気が付きました。 私は幸運にも、IlluxconMark Zug氏と話す機会があり、私が発見したカードの名前の変化について、彼とディスカッションしてみました。2017年、ラスベガスでのマジック・アートショーの期間中に、私たちはMark Zug氏の「Coiling Oracle(とぐろ巻きの巫女)」の最終スケッチを展示しました。 アート解説資料がMarkの元に届いたとき、それは元々「Manaconda」というタイトルでした。「Man(男)」と「Anaconda(アナコンダ)」というちょっと面白い組み合わせは、作品にとてもふさわしいものです。Markによると、そのカードはラヴニカの次元なので、アート解説資料では青、緑、またはシミックが求められていました。人間の形をした上半身に、脚ではなく蛇の体を持ったクリーチャーというのは、シミックの種を混ぜ合わせるという傾向にぴったりです。私は、作品の名前(仮称)が、彼が作品を作る際に決めた事に何か影響を与えたかどうか、Markに質問してみました。アート解説資料とスタイルガイドは、蛇の模様について特に言及していませんでした。明確な描写が無かったので、Markはコンセプトの名前からインスピレーションを受け、蛇の模様はアナコンダをモデルにしました。したがって、「Manaconda」という名前は、実際に最終的なデザインを特徴づけたのです。 Coiling Oracle (とぐろ巻きの巫女)の最終スケッチ(Mark Zug) Party Crasher (パーティ・クラッシャー)(Mike Burns) Illuxconの間に、私は名前の変化の他の例を見つけることができました。作品の名前で、多くの注目を集めている作品がありました。マジックアーティストのMike Burns氏は、アートショーにいくつかのスケッチを持ってきており、その中にはUnstableの「Party Crasher(パーティ・クラッシャー)」がありました。「Party Crasher(パーティ・クラッシャー)」は元々は「Even More Raging Goblin(さらに怒り狂うゴブリン)」として知られており、Jeff Miracola氏の人気なカード、1/1の「Raging Goblin(怒り狂うゴブリン)」を暗に示すものでした。私は、仮称がどのように作品に影響を与えたかについて、Mikeと話し合う機会がありました。オマージュとして、Mikeは「Party Crasher(パーティ・クラッシャー)」の肩当てに、「Raging Goblin(怒り狂うゴブリン)」と似たような模様を採用しました。彼はこのことについて、ブログ でより詳しく述べています。「Even More Raging Goblin」という名前はとても面白く、そして「Un」の付くセットの中でそれが起こることは理解できますが、採用される運命ではなかったのです。 Even More Raging Goblin (さらに怒り狂うゴブリン) の最終スケッチ Mike Burns Raging Goblin (怒り狂うゴブリン)(Jeff Miracola) Wayne Reynolds氏は、アーティストとしても、素晴らしい人としても、私の個人的なお気に入りです。もし、あなたが2012年のラヴニカへの回帰ブロックの間にプレイしたことがあるなら、Wayneの絵がある「Dreadbore(戦慄掘り)」のカードをきっと知っていることでしょう。それは強力な除去のカードで、モダンやレガシーデッキでいまだによく使われています。私は幸運にも原画を実際に見ることができ、そしてその元々の名前は「Chest Gouge(胸えぐり)」だったということを発見しました。「Dreadbore(戦慄掘り)」の方が「Chest Gouge(胸えぐり)」よりもかっこいいとは思いますが、カードの裏にある歴史を知ることができたのは良かったです。 Dreadbore (戦慄掘り) (Wayne Reynolds) ある友人が、最近「Storm Herd(嵐の獣群)」の原画を手に入れ、私が近いうちにそれを届けることになっています。私は、原画の輸送後の状態を確認するために梱包を解きましたが、それはJim Nelson氏による美しい作品でした。作品を眺めた後で、私は右下の角に「Pegasus Migration(ペガサスの移動)」という作品名があるのに気が付きました。その名前はカードの絵と効果にふさわしいものですが、「Storm Herd(嵐の獣群)」の方がずっと攻撃指向のカードという響きがします。このことは、私の絵の見方を変えました。私はそれまでずっと、その絵はペガサスが敵に襲撃しているものだと思っていました。別の見方をすれば、それは鳥の群れが冬に向けて南に移動するような、自然の渡りの場面にもなり得ます。 Storm Herd (嵐の獣群) (Jim Nelson) より深く知りたくなったので、私はツイッターで何人かのマジックデザイナーにカードの名前について聞いてみました。2017年のマジック・アートショーの開催記念パーティー中に、私たちはEthan Fleischer氏にツアーをしてもらい、あるとき彼は作成過程におけるカードの名前について話しました。「My goth girlfriend form high school(私の高校からのゴシックファッション好きの彼女)」のような名前 ー 私はこれは最終的にどのカードになったのか尋ねました。そして、Dark Ascension(闇の隆盛)を含むマジックセットの開発の前任者であるZac Hill氏が、「それはThraben Heretic(スレイベンの異端者)になった」と言いました。彼の言葉の中に、そのクリーチャーは「死体安置所に取りつかれている」というのがありましたが、それは墓地に関わる効果をほのめかすもので、そのブロックのセッティングであるゴシックホラーのイニストラードを色濃く反映していました。 Thraben Heretic (スレイベンの異端者) (James Ryman) Ethanは、ギルド門侵犯の進化の能力を持った0/4のシミッククリーチャー「Elusive Krasis(神出鬼没の混成体)」のカードについた、「Zac's Steatopygous Mutant」という面白い名前についても話してくれました。Steatopugousはギリシャ語で「太ったお尻」という意味で、ハイタフネス・ローパワーのクリーチャーを指す「大きいお尻」というスラングを暗に示しています。よって文字通り、「Zac's Big Butt Mutant(ザックの大きなお尻の突然変異体)」クリーチャーなのです。少なくとも、一時の間はそういう名前だったのです。 Elusive Krasis (神出鬼没の混成体) (Wesley Burt) 最終的に、私は名前は重要なものだと思いました。カードに与えられた名前は、最終的なアート作品に影響を及ぼしていました。名前は、作品の歴史に新たなレイヤーを加えることで、見る人により作品に結びついたような気分を起こさせます。絵の作成中にはその作品は異なる名前を持っていたということを知ることで、絵を見た人の第一印象を見直させることさえあります。これは私の単なる個人的な経験からの感想で、マジックアートについてでなければ、私はアート解説資料のことすら知るはずもありませんでした。 私は数か月前にマスターズ25thのパックを開けました。カードをパラパラめくっていると、目に飛び込んできたのはレアではなく、Coiling Oracle(とぐろ巻きの巫女)の再録カードでした。私は瞬時に「Manaconda!」と大声で叫んだので、周りにいた人になぜ叫んだのか説明しなければなりませんでした。今や私のプレイ仲間は、そのカードのことを「Manaconda」と呼びます。読者の皆さんもそうなったらいいなと思います。 あなたはお気に入りのカードの別の名前やニックネームを知っていますか? あなたはマジックカードの名前の裏にある面白いストーリーを知っていますか? ツイッターで教えてください。皆さんの話を聞けるのを楽しみにしています。