コンセプトから実現まで

もし、あながマジックプレイヤーならば、何千もしくは何万のカードを見たことがおそらくあるかと思います。これらのカードには、何十もの世界と、何千ものキャラクターやクリーチャーが、小さな長方形の中に描かれています。マジック:ザ・ギャザリングのアートは、ゲーム産業の中で一番素晴らしいと言ってよいでしょう。しかし、あなたはアートがオリジナルのアイディアからカードに印刷されるまでの工程について、考えたことがありますか。

アート作品がマジックカードに使用される数年前に、アートはいくつかの段階を経てきます。それは、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト(以下、ウィザーズ)のアートディレクターがアーティストに作品を依頼するところから始まります。契約書にサインをしたら、アーティストは「スタイルガイド」と呼ばれる、彼らがこれから取り掛かるセットの参考資料を受け取ります。このガイドは、次のセットのために作品をどのように描けばよいかを示すためのコンセプトアートも含みます。このガイドは部外秘なものであり、一般人の目に触れることはまずありません。これは、私のお気に入りであるセットデザインの一部であり、ゲームの世界観を作りだす構成要素です。記事の後半で、このプロセスについてより詳しく述べたいと思います。



ミラディン のコンセプトスケッチ(Wayne Reynolds)



ウルザズ・サーガ の基本土地の森のコンセプトスケッチ(Anthony Scott Waters)



ラヴニカ のデジタルコンセプト(Titus Lunter)



モダンマスターズ2017年版の 終止 のアート解説資料

アーティストは、アート解説資料を受け取る前に、スタイルガイドに目を通す時間がいくらかあります。アート解説資料には、色や雰囲気、セッティングや最終的に何が入っているべきか、などの詳細が書かれています。これらの情報をもとに、アーティストはアートディレクターに送るためのスケッチを描いたり、準備作業に取り掛かったりします。これらは手描きスケッチだったり、デジタルスケッチだったり、ときには大まかな色がついた簡単な絵だったりします。アーティストはこれらを通してポイントを伝えたいのですが、承認されないかもしれないので、この段階ではあまり時間をかけたくありません。

アートディレクターがフィードバックをし、スケッチは先の工程に進みます。アーティストによっては、最終的な作品に至るまでに、たくさんの段階を踏むこともあります。多くのアーティストが、最終的な作品を描き始める前に、光や色の感覚を得るためにバルールスタディ(色相・明度・彩度の相関関係を考え、調整すること)をしたり、下準備をしたりします。この作業は、「やり直し」ボタンがない、油絵やアクリル画のような伝統的な手法では特に重要です。デジタルメディアやフォトショップのようなアプリケーションでは、構成要素をレイヤーに分けて作業したり、全体を修正せずに一部だけを消去したりすることができます。このことが、どれだけ時間の節約になるかは想像に難くないでしょう。



不可解なるイスペリア の下描き



死の守り手、セックァー のカラースタディ(Jesper Esjing)



ゴルガリの女王、サヴラ の最終スケッチ

見込みのある最終作品ができあがったら、アートディレクターに送り返されます。この段階で、さらにフィードバックがきて修正されることもありますし、全てがうまくいっていれば、アーティストが提出したものがそのまま承認されることもあります。ごくまれに、作品が却下されて、新しく依頼された作品が取って代わる場合があります。却下された作品は、ほかのカードに使われるか、カードには印刷されないけれどウィザーズに所有されているという中途半端な状態になっています。これらをスラッシュピースと呼びます。

アート作品またはカードがプレビューされた後に、アーティストは情報を広めたり、手掛けたアート作品に関わる商売を始めたりすることが許可されます。アート作品がデジタルの場合、アーティストはプリントを作って、オウンドメディアで販売することを許可されます。アート作品が伝統的な手法で描かれた場合、原画は直接購入かオークションという形で市場に出回るでしょう。マジックアートを購入する方法については、また別の記事で触れますので、楽しみにしていてください。

ゲームプレイ、デザイン、ストーリー、そしてアートがひとつになって、私たちが愛するマジックになるのです。しかし、それはあなた無しでは成り立ちません。プレイヤー、コレクター、そして愛好家の存在無しには、マジックとそのアートは存在し得ないのです。あなたがどこ出身でも、どの言語を話すとしても、言語が十分ではないときにアートは私たち皆を結びつけるゲームの一部なのです。ですので、次回マジックをプレイするときには、ぜひアートそのものをじっくり見てみてください。お気に入りのアートを見つけて、アーティストをツイッターやインスタグラムでフォローし、カードにサインをしてもらい、プリントを買いましょう。マジックをプレイする間にこれらをすることで、私はマジックを大いに楽しみ、リスペクトするようになりました。あなたもそのように楽しんでもらえると幸いです。

 

 

東京にいる方には朗報があります。10月20日(土)~21日(日)に東京MTGが Titus Lunter、Anna Steinbauer、Suzanne Helmigh の3名を招いてイベントを開きます。土曜日にはサイン会、そして日曜日には Titus Lunter がトークセッションを開き、ラヴニカのギルドのコンセプトチームとの仕事について話します。もし近くにいらっしゃれば、ぜひ立ち寄ってみてください。